T.F.W interview 9
atmos 代表 本明秀文さん
「アトモス(atmos)」はスニーカーを中心とするショップ。
菅野:本日はお時間ありがとうございます。以前お話をさせていただいたときから、本明さんに興味がわいて、絶対インタビューしたい!と思っていました。今でも攻め続けているという事にびっくりして…ニュースで見ましたが、あれだけのお金を手にされてなぜ今も攻め続けているんだろうと思って。
本明:結局お金って使える量が決まっていると思うんです。「お金をいくらつかえるか」という話になると思うんですけど、僕ってあまりお金を使わないんです。商売をやるという意味でお金は必要なんだけど、やりたい事がないから、商売が趣味なんですよ。そうなってくると商売をゲーム感覚でやるじゃないですか。じゃあ、お金が手に入ったからゲームをやめるかといえばそうではなくて、面白いからやっているので、重要なのはお金じゃないんです。お金は大切なんですけど、お金じゃない。そこらへんが他の人と違うんです。
たぶん多くの人は、お金をもらって良い車に乗って、飲みに行って、可愛いいお姉さんと遊んでとかってやると思うんですけど、僕はあんまりそこに興味が無いんです。じゃあ、何やるの?といえば、お金を稼いで次何の商売をやろうかなっていうのが僕のパッションなんですよね。「商売をやる」という事がパッションなんです。それが、うまくいったいかないっていうところがゲーム感覚で面白いからやっているんです。みんなに「あんなにたくさんお金をもらったんだから、やめるんでしょ?」って聞かれるけど、これは趣味なのでやめない。好きこそ物の上手なれじゃないけど、そういう事なんだと思うんですよね。
atmos 代表 本明秀文さん
atmos創業のきっかけ
菅野:なぜ今そういう考え方に行きついたんですか?幼少期から、そういった考え方があったんですか?
本明:いやいや、普通だったと思いますよ。やっぱりお金が目標だと「なんで生きるのか」というところに行きつくと思うんです。そうするとやっぱり、僕の場合だと商売を通じて成長を感じられる。だから辞める理由がないんです。お金があるから完成するわけじゃないじゃないですか。死ぬまでに、これは失敗した、こんな嫌な人間がいたとか色々あると思うんですけど、そうのも含めて商売を通して今まで学んできたので、これからもそれは続けていくべきだと思うんですよ。
菅野:もともと起業家を志していたんですか?
本明:いえいえ、全然です。
菅野:例えば、中学生、高校生の頃から会社を起こしたいとかは?
本明:本当にやる事がこれしかなかったから、これをずっとやっているみたいな感覚ですよね。
菅野:ちなみに、atmosの前は何を?
本明:もともとは商社で働いていたんですけど、あまりにもこの会社は儲からないなと思って、2年くらいでやめてしまったんです。それで、この商売を始めたんですね。うちの会社で、一番偉いのは金を稼ぐ奴。だからすごいわかりやすいですよ。金を稼いでいる奴とはしゃべる時間を設けるけれど、これは絶対儲からないじゃんっていう案件は、本人がどんなに儲かると思っていても、絶対僕はその人と話をしない。
菅野:面白いですよね。自分が経営者としてやっていく中でも、その優先順位はすごく良いなと思います。
本明:人間24時間しかないじゃないですか。そうすると、お金が儲かる順番で話をしていったほうが効率が良いですからね。
菅野:本当にそうだと思うんですけど、そこまではっきり「お金」と言われる方って少ないなと思うんです。特に日本は。実際に中学、高校、大学の時から、本明さんのような方から「お金」の教育を受けていたら、日本はもっと良くなるんじゃないかなと思うんですけど、そこをどうしても濁したくなる日本の風潮はすごくあるかなと思っています。
本明:でも、別にお金をもっているから良い人間、無いから悪い人間というわけじゃないんだけど、やっぱり商売をやっている上では、お金が一番じゃないですか。だからビジネスでは、「お金」ってはっきりと言わないと伝わらない。一番大切な事だと思う。
atmosが成功した理由は「お金」についての考え方!?
菅野:では、atmosがここまで伸びた理由をお聞きしたいなと思ったのですが、それはやはり、はっきり「お金」の部分を示してきたからなんでしょうか?
本明:atmosもたまたまだと思うんですよ。ただ、ひとついえるのは、僕が年を取ったから。
菅野:どういう事ですか!?
本明:たぶん、若い時に金、金、金、金って言ってると、なんだこいつってみんな思うんだけど、それをずっと続けてくると、こいつ本当は馬鹿じゃないかもなってなってくるんです。僕いま53歳なんですけど、20年くらい金、金って言ってると、本当にこいつ金の事しか興味ないのかなって、だんだん世間に浸透してくるんです。そうするとみんな、しょうがないなってなるんですよね。今、僕のところで働いている人間は、年下が多いじゃないですか。その年代だとたぶん、家の中で金、金っていう人なんていなかったんじゃないかな。だから彼らが僕みたいな人を見ると、こういう人もいるんだって結構賛同者が出てきたりして、そういう人たちが僕を助けてくれる。
菅野:めちゃくちゃわかりやすいですね。そこまではっきり金、金と言えない自分もいたので。僕らは経営者なので金の事ばかり考えていますけど、雇われる側というのは自分の感情とかも相手にしてほしいと思っていると思うし、給料が固定給だったりするから、自分の事を理解してほしいとか、わかってほしいという感情が強いのかなって。
本明:「この企画はまったよ!!」みたいなお金を儲ける喜びってあるじゃないですか、働いている人間はそういった楽しさがないと仕事って続かないと思うんですよ。例えば変な話、「甘い物もってこい」っていうだけだと、達成感を与える事が出来ないと思うので、商売での達成感といえばやはり「お金を稼ぐ」だと思うんですよね。
THAT’S FASHION WEEKENDに賛同した理由
菅野:本当、この話は若い人に聞いてほしいなって思いました。今回のイベントは、大学生が絡んでいたり、若い子たちが結構参加をしてくれると思うので、そういう人たちに伝えたい内容だなって思いながら聞いていました。今回のイベントを開催する上で、大学生との絡みに興味を持っていただいていると思うんですけど、そこに対する魅力は何だと思いますか?
本明:若い人の方が吸収が早いじゃないですか。テクノロジーも発達している中で、速く商売という物を考えてやっていかないと上手くいかないんですよ。そうなってくると、若い人に僕も色々と教えてもらいたい。YouTuberのコムドットが流行っているじゃないですか。僕から見たら、どこが面白いかわからないのに、若い人はあれが面白い!って言っている。そういった意味で、若者と接点をつくるというのは、新しい知識やエナジーをもらうとか、パッションを感じるという意味で必要な事だと思うんです。
菅野:ずっと20歳とお付き合いするためにはどうしたら良いんだろうってずっと考えていたんですよ。24,5歳のときは普通に遊ぶ中ですけど、30歳を超えてきたりすると、向こうもこちらにちょっと気をつかうというか。こっちに与える物がないと、20歳の子がわざわざ30歳を超えた人に会いに来てくれないなと思った時に、自分が年齢にあった成長をしていないと、若者に相手にされないなというのがすごくあったりして。けど、圧倒的な結果を出している方には、若者は関わりたくてしょうがないじゃないですか。いくらでも学生が、本明さんのところにはたくさん集まってくるだろうなと思って。今回、うちのイベントとしてどうしたら力になれるんだろうって考えたときに、そこが一番かなと思っているんですけど、実際どういう事を大学生とやっていくのが良いと思いますか?
本明:UGGさんの商品を大学生たちに、アップサイクルしてもらうとか。こういうのは僕たちと違ったアイデアが出てくるんじゃないかなと思って、ちょっと期待しているんです。僕たちと違った発想が出てくるかもという所に期待をして、今回参加しているんです。
菅野:この件を大学生に話したら、やはり盛り上がりましたし、長期的に色々絡んでいけたら嬉しいなと思っていて。今回出店していただくポップアップについてお伺いしたいのですが、簡単にどういった取り組みだと説明したら良いですか?
本明:UGGさんってグローバルで商売やってるじゃないですか。僕達アパレルも、ライセンスを持ってアパレルを作っているんですよね。UGGにはアンドリアというトップの方がいるんですけど、ヘレンというトップのデザイナーと一緒に飯を食って。そのときに、UGGの服ってこれ、おばさんしか着ないでしょと話しをしたんですよ。これじゃ日本で売れないと。それで、ヘレンと言い合いになっていたら、アンドレアがまあまあまあと入ってきて、「とりあえずこいつにやらせてみよう」って。じゃあ僕たちに、服を作ってみてって言ったんですよ。だから、こういった感じでたまたまっていう事もあるんだよって、若い人に知ってもらいたい。起業する事も、たまたまって事がある。ファッションは、服とかアクセサリーとか、外見じゃないですか。だけど結局、いきつくのって人間関係だと思うんですよ。それをうまくわかっていってほしい。
菅野:そのストーリーを知っただけで、めちゃくちゃ興味湧きました。グローバルでどういう服を出していて、日本ではどう違うのかとか、このイベントの主催者としてはどういう流れで企画するようになったかとか。そういう事を伝えられたら、みんなが面白がるだろうなって。そういう風に会話する場で、仕事って決まっちゃうんだ、みたいな。UGGのトップの方とそういった会話ができるってうらやましいなって思います。そういったところでも遠慮せずに意見を言うんですか?
本明:そう!遠慮せずにお金儲けようよって言う。それ、最終目的じゃないですか。企業をやっている、会社をやっているというのは最終目的がお金なんです。だからそれをはっきりと言う。日本人の多くは、美味しくない食べ物を出されたときに、遠慮して美味しいっていうと思うんです。でも、まずいときはまずいって言わないとその後上手くいかないから。僕はそばが好きだから、毎日蕎麦ばっかり食べてるんですけど、メディアで話題の蕎麦屋にいったときめちゃくちゃまずいと思った事があって。みんなは美味しいって言いながら食べてるじゃないですか。僕があそこの蕎麦屋まずいよねと言って初めてみんな、僕も実は味が薄いと思っていましたとか言い始める。気を遣わなきゃいけないところは気を使うべきではあるけど、気を遣わなくて良いところで気を遣うのは余計だと思うんです。
本明社長が考えるサステナブル
菅野:前回本明さんにお会いしたときに、「サステナブルに興味がない」と言われた事にびっくりしたんですよね。どんなに興味がなくても、時代に合わせていかなくてはならないみたいな空気があるので、思っていてもそんな風に言われた方はいなかったので。
本明:一番のサステナビリティって何って言ったら、変な話、死ぬ事だよね。人類がいなくなる事が、一番地球にやさしいと思う。自分にできる事といえば、ごみを分別して捨てるとか、エコバッグもって歩くとか、そういった事しかないですよね。
菅野:atmosさんに関しては過剰在庫がないので、あえてうたう必要もないですよね。
本明さんの今後の展望をお聞きしたいです!
本明:面白い事をやり続けるだけです。僕の商売は、全部とっちらかしてやりたかった。少しずつ増やしていって、最後に大きなかたちにできたら。僕の商売はベルトコンベアではなくて、セル型。野中侑次郎ってう経済学者がいるんだけど、彼のシステムっていうのがあって、暗黙知があって知があってぐるぐる回るみたいな。みんな興味ないと思うんだけど、僕が好きな哲学者には西田幾多郎、鈴木大拙、フッサール、井筒俊彦とかいるんです。みんな最後は何を言っているかよくわかんないと思うんだけど、僕がそのわからない部分を最後は納得して死ねれば良いなと思っているんです。
菅野:個人的な事が知りたくて、幼少期がどうとか、お金についてどう考えているとか、ビジネスの場ではわからない部分が。みなさんに、記事を届けるのがすごく楽しみになりました!ありがとうございました!
atmos
https://www.atmos-tokyo.com/
THAT’S FASHION WEEKEND
https://thatsfashionweekend.com
インタビュアー:菅野充/THAT’S FASHION WEEKENDプロデューサー